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2019.6.18

信用補完制度について

 昨年の4月に、信用補完制度(信用保証制度)の見直しが行われました。しかし、実際にこの1年間で中小零細企業の経営者の方々と話をしていると、制度の改正を知らないという方が大多数のように見受けられます。

 そこで今回は、見直された制度内容について再度、解説していきます。

①新たに拡充・創設された保証制度

 企業や事業のライフステージを創業期・成長期・安定期・衰退期(再生期)という4つのステージに分けた際に、各ステージに応じて資金需要が変わってきます。信用保証の内容も、各ステージに応じて、これまで以上にきめ細やかな資金面の支援ができるよう、以下のように支援の拡充や制度の創設が行われました。

・創業関連保証(責任共有制度 対象外)
 創業時だけでなく、事業開始後の資金繰りもさらに支援できるよう、手元資金なしに受けられる限度額が1000万円→2000万円に引き上げられました。

・小口零細企業保証(責任共有制度 対象外)
 小規模事業者は、経営基盤が弱いため赤字や債務超過になりやすく、そこから正常な状態まで回復するには期間を要することも多いです。そうなった際、金融機関としては債務超過状態や実質的な赤字補填資金としては支援が消極的になりがちです。そこで、資金繰りの持続的な安定性を持たせるために、小口保証の限度額が1250万円→2000万円に引き上げられました。

・危機関連保証(責任共有制度 対象外)
 リーマンショック級の経済危機や東日本大震災級の災害が発生した場合、業種や地域を問わず迅速に対応できる危機関連保証が新設されました。これに伴い、セーフティネット保証5号(5号認定)は責任共有制度の対象となりました。

・特定経営承継関連保証(責任共有制度 対象)
 経営者が事業承継時に必要となる株式取得資金等の資金を法認定(経済産業省の認定)を受けることで保証対象とする制度が新設されました。

・自主廃業支援保証(責任共有制度 対象)
 経営者自らが廃業を選択する場合、撤退に必要な資金ニーズ(債務整理、事務所や店舗の現状回復費用等)に対応できるようになりました。 

         
②経営者保証を不要とする取扱いについて

 従前までは、保証協会付融資=連帯保証有りというのが常識でしたが、昨年の制度改正により、経営者保証への対応についても見直しが図られました。一定の要件を満たす場合には、全ての保証制度で経営者保証なしでの取扱いが可能となりました。

一定の条件として、次の3種類が新たに定められています。

1.金融機関連携型
2.財務要件型
3.担保充足型

 財務要件型の条件については、各信用保証協会のHPや信用保証協会が年度毎に発行している『信用保証の手引き』を参照にして下さい。

 また、保証協会の財務要件型をクリアするくらい良好な財務内容の会社の場合、プロパーでも経営者保証を外せる可能性が非常に高いです。もし、そのような会社で連帯保証付の融資を受けている会社がありましたら、保証人を外す交渉を銀行にしてみることをお勧めします。

③制度改正の背景

 今回の制度見直しの背景として大きな要因となっているのが「金融機関の信用保証に対する過度な依存」です。正直、保証協会付の融資であれば、融資稟議もプロパーとは比べ物にならないほど楽になり、貸し倒れ時のリスクも最小限に抑えられるということで、金融機関にとって都合良く利用されてきました。また、企業側も、ある程度財務が悪化しても資金調達ができる、ということで、経営に緩みが出る、ということも言われています。そのようなことを是正し、金融機関側にもリスクを取りながら企業ときちんと向き合っていきましょう、という意図が今回の制度改正では見られます。

 

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