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2019.6.18

信金・信組と付き合うメリット、デメリット

 私たち中小企業の身近な存在である金融機関である信用金庫と信用組合ですが、彼らが頼りになると言われるのには理由があります。

 信金と信組は、「信用金庫法」「中小企業等協同組合法」という法律により、営業できる地区や、会員・組合員になる資格について厳しい制約があります。

 一方、銀行には「銀行法」という法律がありますが、営業地区や貸出先については制約がありません。東京や大阪に他県の地方銀行が次々に支店を出し、懸命に融資先を探しているのは営業地区についての制約がないからできることなのです。

【限られた営業地区】
 私たちの会社にも定款(ていかん)があると思いますが、信金・信組にももちろんこの定款があります。その定款は国の認可が必要で、定款に営業する「地区」を自ら定めることになっています。営業する地区は、通常、市町村や都道府県単位で決めますが、銀行の営業エリアに比べると非常に限られた範囲になります。

 そして、この営業地区で事業をする者が会員・組合員の資格をもち、融資は原則としてその会員を対象としますので、営業エリアを飛び越えて新規融資先を探すことが許されないのです。
よく、成長した企業が本店を引っ越し、付き合いのあった信金・信組の営業エリアから外れてしまったために、以後、融資を受けられなくなったということがありますので、本店移転をする際は注意が必要です。

【限られた融資先】
 営業地区内の企業にしか貸せないという制約の他にも、信金ですと、従業員300人以下または資本金9億円以下の事業者しか会員になれないという制約があるため、信金が大企業に融資することは信用金庫法で許されていません。

 メガバンクや大手地方銀行のように、融資量を伸ばすために大企業に数百億・数千億円の融資をするということは、やりたくても法律上できないのです。

【逃げ道のある地銀と、逃げ道のない信金・信組】
 このように、信金・信組は、限られたエリア内の、限られた規模の会社にしか融資ができないのです。
中小企業にとっては、ここが信金・信組の良いところなんです。ここにきて地域の人口減少が切実な問題としてクローズアップされていますが、数十年前から予想されていたにもかかわらず、金融機関は目先の収益確保を優先し、この問題を放置してきました。

 ただ、人口減少問題に加えて超低金利時代に突入した後、いち早くその問題を受けとめ、地元金融機関として対応に取り組んだのはやっぱり信金・信組でした。地方銀行の中にも地元貢献に尽くしている銀行はありますが、地方銀行には地元の金融の柱という立場と同時に、「首都圏進出」という逃げ道があったのです。

 首都圏の駅前で空を見上げると、各地方銀行の空中店舗を多く見かけるのはこのためです。
営業地区が厳しく制限されている信金・信組には逃げ道がなかったのです。逃げ道がなければ、その地域で覚悟を決めるしかありません。

 自社が付き合うべき金融機関を選ぶ際、地方銀行と信用金庫・信用組合を対比させる上で、この違いというのは決して軽視できません。

【いつまで信金・信組で良いのか。】
 地域から逃げ出さないところが信金・信組の良いところではありますが、反面、規模の小ささからリスクをとれる金額には限界があります。融資の際には、基本的には保証協会の保証付きが前提となりますし、保証協会の保証のないプロパー融資ですと出せても5,000万円が限界かなと思います。

 年商3億円くらいまでなら信用金庫でも十分対応可能ですが、年商が5億円くらいになると一回に融資を受ける金額も5,000万円くらいになってきますので、保証協会の枠内では足らず、かといってプロパーで5,000万円が目安の信金だと支えるのが難しくなります。

 企業の成長に伴い信金から卒業する時が来ますが、苦しかった時に支えてくれた信金・信組への恩を忘れず、彼らの負担にならない程度の付き合いを継続される人情深さが中小企業経営者だと思います。

 

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